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品質トラブルは仕入れ前にほぼ決まっている ― 検品や工場のせいにする前に考えるべきこと ―

中国輸入貿易15年 内山剛

中国輸入販売歴10年目。41歳。Amazon、楽天他サイトにて販売。最高月商280万円。

新卒で業界3位の通関業者(フォワーダー)入社。某大手ロボットメーカーや某超有名化粧品メーカー等担当し幅広い経験。

転職後、輸出担当やHP制作を経て独立。某大手100円ショップの卸売業者との縁があり、中国やベトナムに滞在し現在に至る。

詳しくは代表プロフィールをご覧ください。

こんな方におすすめ

  • 海外仕入れ・中国輸入で品質トラブルを繰り返している人
  • 検品やクレーム対応に疲れてしまっている人
  • 価格重視の仕入れに限界を感じ始めている人

品質トラブルが起きたとき、多くの人は「工場が悪かった」「検品が足りなかった」と考えます。
実際、現場ではその言葉で話が終わってしまうことも少なくありません。

しかし、仕入れや輸入の実務に長く関わっていると、ある違和感が積み重なっていきます。
それは、トラブルが起きる案件ほど、仕入れ前の段階ですでに不安要素が揃っているという事実です。

価格の決め方、仕様の曖昧さ、サンプルの見方、工場との距離感。
どれも一つひとつは小さな判断ですが、それらが積み重なった結果として、品質トラブルは起きています。
逆に言えば、後からどれだけ対処しても、覆せないものがあるということでもあります。

この記事では、
「なぜ品質トラブルは仕入れ前にほぼ決まっているのか」
「検品や工場選びだけでは解決しない理由は何か」
を、感情論ではなく、実務の視点から整理していきます。

品質トラブルは「製造・検品」ではなく「仕入れ判断」でほぼ決まる

品質トラブルが起きたとき、多くの人は原因を製造工程や検品体制に求めます。「工場の質が悪かった」「検品が甘かった」「海外だから仕方ない」。こうした言葉は非常によく聞かれます。しかし、実務の現場を長く見ていると、この考え方そのものが品質トラブルを繰り返す原因になっていることがわかります。

実際のところ、品質トラブルの多くは製造が始まる前、もっと言えば仕入れを決めた時点で、すでにほぼ結果が決まっています。価格設定、仕様の決め方、サンプルの捉え方、工場との取引条件。これらが曖昧なまま進めば、後工程でいくら努力しても品質は安定しません。

工場は基本的に「与えられた条件の中で、指示された通りに作る」存在です。品質が期待と違った場合、それは工場が勝手に手を抜いたというより、発注側が「どのレベルの品質を、どの条件で求めているのか」を明確に定義していなかった可能性が高いのです。

検品についても同様です。検品は品質を作り出す工程ではなく、不良を見つけて弾く工程です。設計や発注段階で無理があれば、検品で救える範囲には限界があります。
品質トラブルを「後工程の問題」と捉え続けている限り、根本的な改善にはつながりません。


価格・サンプル・仕様の時点で、品質の上限はすでに決まっている

仕入れ判断の中でも、特に重要なのが価格と仕様です。価格は単なる交渉材料ではなく、品質の上限を決める要素です。材料、人件費、管理コスト、検品工程。これらすべてが価格に反映されます。どんなに優秀な工場でも、与えられた単価以上の品質は出せません。

安さを優先して仕入れた商品に対して、「思ったより雑だった」「日本向けとしては厳しい」と感じるケースは非常に多いですが、それは想定が甘かっただけとも言えます。その価格帯で実現できる品質水準を理解せずに仕入れれば、後から必ず違和感が出ます。

サンプルに対する認識も同様です。サンプルは完成形ではありません。多くの場合、少量生産で、熟練作業者が手をかけて作られています。工場側も「良い印象を与えたい」という意識で仕上げるため、量産時と条件が異なります。
サンプルが良かったからといって、同じものがそのまま大量に届くと考えるのは危険です。

本来、サンプルで確認すべきなのは、見た目の良さだけではありません。修正指示への反応、理解度、コミュニケーションの精度。量産時にブレが出そうかどうかを見極める材料として捉える必要があります。
この段階で違和感を見逃すと、量産後に品質トラブルとして表面化します。


曖昧な指示と無理な取引が、品質トラブルを量産する

品質が安定しない原因として非常に多いのが、仕様や指示の曖昧さです。「普通で」「日本向けで」「しっかりした感じで」といった表現は、発注側にとっては意味が通じているつもりでも、工場側にとっては判断材料になりません。工場は数値と基準で動きます。基準がなければ、工場側の解釈で進めるしかありません。

さらに問題なのは、NG基準が示されていないケースです。どこまでが許容範囲で、どこからが不良なのか。その線引きがなければ、後からトラブルになった際に話が噛み合いません。「そんなつもりじゃなかった」という言葉が出る時点で、仕様設計に問題があります。

加えて、取引条件も品質に大きく影響します。初回から大ロット、過度な値下げ要求、途中での仕様変更。こうした取引は、工場側の負担を増やし、結果として品質を不安定にします。工場も人が動かしている以上、無理な条件が続けば優先順位は下がります。

品質は工場の能力だけで決まるものではありません。どんな条件で、どんな関係性で取引しているかによって作られるものです。ここを軽視すると、どれだけ工場を変えても同じ問題が繰り返されます。


検品は万能ではない。だからこそ「仕入れ前」が重要になる

検品に期待しすぎると、必ず壁にぶつかります。検品は最後の砦のように語られることがありますが、実際には「被害を減らす作業」に過ぎません。不良率が高い商品を、検品で救おうとすれば、コストも時間も膨らみます。それでも品質が安定するわけではありません。

設計や仕入れ判断が間違っていれば、検品でできることには限界があります。むしろ、検品に頼り切った仕入れは、いずれ行き詰まります。
品質を安定させたいのであれば、検品より前の工程、つまり仕入れ前の判断にエネルギーを使うべきです。

価格設定、仕様の具体化、サンプルの見方、取引条件。ここを丁寧に詰めるだけで、品質トラブルの発生率は大きく下がります。


まとめ

品質トラブルは偶然ではありません。
多くの場合、仕入れ前の判断でほぼ決まっています

・その価格で、どこまでの品質を求めているのか
・仕様は数値と基準で定義されているか
・サンプルを正しく見ているか
・工場と無理のない取引ができているか

これらを仕入れ前に決め切るだけで、トラブルの大半は防げます。
「届いてから考える仕入れ」から、「仕入れる前に決め切る仕入れ」へ。
それが、品質トラブルを減らす一番の近道です。

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中国輸入販売歴10年目。41歳。Amazon、楽天他サイトにて販売。最高月商280万円。

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