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海外出張のリアル:大連で割り箸機械を間違え、飛行機は飛ばず、交渉は噛み合わない

中国輸入貿易15年 内山剛

中国輸入販売歴10年目。41歳。Amazon、楽天他サイトにて販売。最高月商280万円。

新卒で業界3位の通関業者(フォワーダー)入社。某大手ロボットメーカーや某超有名化粧品メーカー等担当し幅広い経験。

転職後、輸出担当やHP制作を経て独立。某大手100円ショップの卸売業者との縁があり、中国やベトナムに滞在し現在に至る。

詳しくは代表プロフィールをご覧ください。

こんな方におすすめ

  • 海外でビジネスを考えているけど不安がある人
  • アジア圏での仕入れや製造委託を検討している事業者
  • 「飛行機移動は慣れてるから平気」と思っているフリーランスや経営者

海外出張って、ちょっと華やかな響きがありますよね。パスポート片手に飛び回って、現地の美味しいものを食べて、刺激的な経験をして……そんなイメージを抱いている人は多いかもしれません。でも、実際に何十回と出張を重ねてみると、見えてくるのは「細かい失敗の積み重ねが命取りになる」という現実です。

今回ご紹介するのは、中国・大連への出張で経験した、割り箸の製造機を見に行ったときのエピソードです。たった数日の滞在でも、学びは濃く、ミスも痛い。そんな“地味だけど刺さる”話を、包み隠さずお届けします。

割り箸の機械を見に中国・大連へ。下調べ不足が生んだ大失敗

「大連に割り箸の製造機を見に行ってほしい」──当時、私はあるビジネスプロジェクトの中で、そう指示を受けました。背景としては、100円ショップ向けに販売する割り箸の生産をアジアで行うための準備段階で、機械選定が急務だったんです。中国語はある程度話せる自信がありましたし、大連は親日的な都市としても知られていて、日本語が通じる場面も多く安心していました。

ところが──。いざ現地に到着してみると、私が見せられた機械は、ボスが想定していたものとはまったく違っていたんです。割り箸には、「裸」「半封」「完封」といったタイプがあり、それぞれに対応する機械も異なります。私が視察したのは“違うタイプの機械”で、現地の技術者と話して動画も撮って報告書も作ったのに、帰国後には「これじゃない」「なんでこんなの見てきたんだ」と強い怒りを受けました。

要するに、私の下調べ不足が招いたミスでした。言語ができても、情報の精度や現地とのすり合わせが甘いと、意味がない。むしろ信頼を損ねる結果になってしまう。今でもその悔しさと冷や汗は忘れられません。


飛行機は信用できない?大連空港で濃霧トラブルに巻き込まれた話

出張の最後に待っていたのは、割り箸の機械以上にイライラする“空のトラブル”でした。日本への帰国便は朝出発の予定。ところが、大連空港が濃霧で閉鎖され、飛行機がまったく飛ばない。結局、夕方まで待って、ようやく離陸したのですが、乗り継ぎもズレ込み、スケジュールは崩壊。成田から地元までの移動も深夜にズレてしまい、次の日の業務にも支障が出ました。

「海外出張はリスクの連続」とは聞いていましたが、ここまで身にしみて体験したのは初めてでした。日本の新幹線のように正確で信頼できる交通機関は、海外では通用しない。天候次第、空港の事情次第、航空会社の気分次第でスケジュールがコロッと変わる。それを前提に動かなければならないという現実を、改めて思い知ったんです。

特にビジネス出張は“時間が命”。1日のズレが致命傷になることもあります。何十回海外に行ってきた中でも、大連でのこの経験はかなり教訓的でした。

中国人との“当たり前”の違い──商談の温度差と交渉スタイルの現実

大連での滞在中、製造機械の視察以外にも何度か現地の業者と話をする機会がありました。もちろん中国語である程度スムーズには会話できたのですが、ふと気づいたのは「温度感のズレ」。日本人のように“合意を前提に、曖昧な点は詰めておく”という発想ではなく、中国では「とりあえずやってみよう」「まず形にしてから交渉しよう」という文化が色濃くあります。

たとえば、こちらが“価格の見積もりだけを聞きたい”と思って話を始めても、相手は「すぐ契約に進めたい」という姿勢で、早口でどんどん条件を詰めてくる。こちらが一歩引いて確認をしようとすると、「なぜためらうのか?」という目で見られることも。言語が通じるとはいえ、考え方の土台が違うと、スムーズな商談にはならないんです。

しかも、驚いたのは“相手が悪気なく値段を日替わりで変えてくる”という点。昨日聞いた価格が今日は違う。しかも、それを当然のように言ってくる。日本人なら「そんなのありえない」と思いがちですが、中国では原材料や為替、人手の流動性によって日々条件が変わるのがリアル。現地ではこれが常識です。

このとき私が痛感したのは、「日本的な“慎重な進行”は、時に相手に不信感を与える」ということ。そして「こちらが受け入れられるリスクと限界を、事前に線引きしておかないと飲み込まれる」ということでした。商談の本質は言語より“文化のズレ”をどう乗り越えるかにある──そんな気づきも、大連での数日の中に詰まっていました。


まとめ

「言葉が通じれば大丈夫」「中国出張には慣れている」──そんな油断が、意外と一番危ない。現地との技術認識のズレ、思い込みによる下調べ不足、そして交通インフラへの過信。どれも私が実際に失敗し、痛感したことばかりです。大連での数日の滞在で得た学びは、「事前準備は念入りに」「想定外を前提に動く」という2点に尽きます。もしこれから海外出張に行く予定がある方には、ぜひ私の失敗を“予習”として活用してもらえたらと思います。カッコいい経験談じゃないけど、こういう泥臭い話こそ、リアルな現場の声だと思っています。

 

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中国輸入貿易15年 内山剛

中国輸入販売歴10年目。41歳。Amazon、楽天他サイトにて販売。最高月商280万円。

新卒で業界3位の通関業者(フォワーダー)入社。某大手ロボットメーカーや某超有名化粧品メーカー等担当し幅広い経験。

転職後、輸出担当やHP制作を経て独立。某大手100円ショップの卸売業者との縁があり、中国やベトナムに滞在し現在に至る。

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