こんな方におすすめ
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これから中国輸入ビジネスを始めようとしている初心者
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展示会同行や独占販売に憧れているが実態を知りたい方
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コンサルに頼らず、自力で経験を積みたいと考えている人
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小さなスタートから堅実に収益を上げたい個人事業主
「中国輸入ビジネス」と聞くと、安く仕入れて高く売るだけの簡単な商売だと思うかもしれません。しかし、実際にやってみるとその裏側には膨大なリサーチ、現地との信頼構築、法律や物流、資金繰りの現実といった“生々しい実務”が存在します。今回は2010年から中国輸入に取り組んできた筆者が、実体験をもとに成功のコツ、そして「やらない方がいいこと」も含めて赤裸々に綴ります。
1. 初めての輸入はアメリカからの仕入れ
私が最初に挑戦した輸入ビジネスは、実は中国ではなくアメリカからのものでした。当時はまだ輸入ビジネスが今ほど一般的ではなく、「個人で海外から商品を仕入れて販売する」という行為自体が新鮮だった時代。私が目をつけたのは、当時子供たちに大人気だった「アナと雪の女王」のマスコット商品。小さくて軽く、単価も安いという点で、初めての輸入商品としてはうってつけでした。
海外オークションやeBayを活用して、数個ずつ仕入れてはヤフオクで販売してみました。すると、意外にも売れ行きは好調。利益率はそれほど高くありませんでしたが、「海外の商品でも日本でちゃんと売れる」という手応えを感じた瞬間でした。
ここで得た教訓は、「トレンドを読む力」と「小ロットでのテスト販売の重要性」です。最初から大きな勝負をせず、まずは小さく始めてみる。そして売れるとわかったら、徐々に規模を拡大していく。この姿勢はその後の中国輸入にも大いに役立ちました。
2. 飛躍しすぎた広州展示会とコンサルの失敗
アメリカ輸入で少し成功体験を得た私は、次なるステージとして「中国輸入」に目を向けました。当時、ネット上では中国の展示会(広州交易会)に参加し、現地で直接メーカーと契約を結び、独占販売権を取得して大成功する――そんな夢のような話が溢れていました。
そこで私は、ある有名コンサルタントが主催する「広州展示会同行ツアー」に参加。費用は高額でしたが、「現地で一緒に交渉してくれる」「独占契約が取れる」という甘い言葉に乗ってしまいました。
実際に広州の展示会に行くと、確かに日本では見かけない魅力的な商品がずらりと並び、心が躍る体験でした。しかし問題はその後。「独占契約」というのは、話がそんなに簡単ではなかったのです。そもそも展示会に出展している企業は、すでに各国のバイヤーと取引実績があるところが多く、「初対面で、しかも実績ゼロの日本人」にいきなり独占販売権を渡すことはまずありません。
コンサルの助言も的外れで、結局「気に入った商品を見つけて普通に仕入れてくる」だけで終わりました。同行費用に対するリターンはほぼゼロ。ここで学んだのは、「夢のようなビジネスモデルには現実とのギャップがある」ということ。そして、経験のない人ほど“簡単に成功できる道”を探しがちだという現実です。
3. 独占販売は「幻想」だった
広州展示会での失敗にもめげず、日本に戻った私は今度は国内で独占販売契約を結べないかと模索を始めました。私の主力商品はアウトドア用品だったため、海外メーカーに対して英語でメールを送り、独占販売の提案を行いました。
しかし、返ってくる回答はどれも同じ。「過去に一定数の取引がある実績あるディストリビューター(代理店)としか契約しない」「月間50〜100個以上の定期発注が条件」といった、個人では到底クリアできない要求ばかり。
たとえ契約を結べたとしても、今度は在庫リスクや宣伝広告費の問題が出てきます。「独占販売」は確かに響きはいいですが、現実は仕入れ資金・販売ルート・販促力のすべてを一手に担う必要がある“超高リスク事業”だと実感しました。
この経験から私は、独占販売という「夢」を手放し、むしろ「ライバルがいても構わないから、小ロットで確実に売れる商品を扱う」スタンスにシフトしました。特に中国では、OEMやODMで自分のブランドを作ることも可能です。独占権がなくても、工夫次第で“自分だけの売り方”は作れる。その現実路線の方が、長く安定してビジネスを続けられるのです。
実績ゼロでも始められる現実的な戦略とは
「独占販売が取れない」「実績がないから相手にされない」――これは中国輸入を始める際、多くの初心者がぶつかる壁です。筆者自身も、実績ゼロの状態で数多くのメーカーにアプローチをしましたが、相手にされることはほとんどありませんでした。では、そんな中でどうやってビジネスを成立させたのか。その答えは「小さな実績づくり」と「リサーチ力の徹底」にあります。
まず大事なのは、誰もが簡単に買える1688.com(アリババ)やタオバオといったプラットフォームを使いこなすこと。これらのサイトではロット数が少なくても交渉次第で対応してくれる工場も多く、初心者でも比較的リスクが低く取引をスタートできます。さらに、1688で仕入れた商品を日本のフリマアプリ(メルカリ・ラクマ)で出品し、販売データを作ることで、立派な“実績”となります。
このような小さなサイクルを何度も回し、「売れる商品」「リピーターがつく商品」「季節変動に強い商品」などの傾向がつかめるようになります。データがたまれば、次第にまとめて仕入れることが可能になり、やがてオリジナルパッケージやOEMへのステップアップも見えてきます。
筆者の場合、アウトドア用品でこの戦略を実行しました。夏のレジャー用品や防災グッズなど、ニッチだけど需要のある分野に焦点を絞ることで、価格競争からも距離を取れ、安定した収益を確保できました。さらに、SNSでレビューや使用シーンを発信することで、「ブランドっぽさ」を演出し、他のセラーとの差別化にも成功。
ポイントは、「できることに集中し、小さな成功を積み重ねる」こと。そして「最初から完璧を目指さない」ことです。実績ゼロでも、学びながら進めば確実に道は開けてきます。
まとめ
中国輸入は決して一攫千金のビジネスではありません。現地の事情、物流のリスク、独占販売の現実など、表面では見えない部分にこそ成功のヒントがあります。筆者自身、夢を見て失敗した経験を通じて、「独占」にこだわらず、「小さく始めてコツコツ売る」ことの大切さを痛感しました。
成功とは、地味で退屈な作業の積み重ねの先にあるもの。安定的な収益を上げるには、真面目に、堅実に、情報収集と改善を続けることが一番の近道です。