こんな方におすすめ
- 「グレーだけど大丈夫」と感じている商品を扱っている人
- これから中国輸入・海外輸入を始める人
- 価格差だけで商品選定をしている人
輸入ビジネスと聞くと、「偽ブランドを扱った」「密輸をした」「明らかな禁止商品を仕入れた」──そんな“分かりやすい違法行為”を想像する人が多いかもしれません。
しかし、実務の現場で見てきた現実は少し違います。
本当に危険なのは、悪意を持ってやる行為ではありません。
むしろ「普通に仕入れて、普通に売っただけ」という人が、最も違法に近づいていく場面を何度も見てきました。
輸入ビジネスの怖さは、「知らなかった」「つもりはなかった」が一切通用しない点にあります。
税関や行政が見るのは、あなたの気持ちではなく結果です。
この記事では、輸入ビジネスにおいて**一番“違法に近づく瞬間”**がどこなのか、そしてなぜ多くの人がその一線に気づかず近づいてしまうのかを、実務視点で整理していきます。
これから輸入を始める人、すでに売上が出始めている人ほど、ぜひ一度立ち止まって読んでみてください。
目次
一番危険な瞬間は「まあ大丈夫だろう」と判断した時
輸入ビジネスで違法に最も近づく瞬間は、仕入れた時や販売した時ではありません。
それは**「まあ大丈夫だろう」と自分で判断した瞬間**です。
多くの人は、違法になる瞬間を「明確な行為」だと思っています。偽ブランドを扱った、禁止商品を輸入した、虚偽申告をした──こうした分かりやすい行動が違法だと考えがちです。しかし、実務の現場では、もっと静かで目立たない判断の積み重ねが問題になります。
輸入に関わる法律は、専門家でも全体像を即答できるほど単純ではありません。薬機法、食品衛生法、電気用品安全法、ワシントン条約などが複雑に絡み合い、商品・用途・販売方法によって適用範囲が変わります。
この複雑さゆえに、多くの輸入者は「完璧に理解するのは無理だ」と感じ、どこかで判断を省略します。
ここで生まれるのが、「前に通ったから」「今まで何も言われていないから」「量が少ないから」といった自己流の安全基準です。しかし、法律において個人の基準は意味を持ちません。行政が見るのは、あくまで結果と事実です。
特に注意すべきなのは、この判断がほぼ無意識で行われる点です。
売上が出始めると、確認よりスピードが優先されます。「ここで止まったら機会損失だ」「今さら調べ直すのは面倒だ」という感情が、判断を雑にします。
この瞬間、人は自分が判断しているという自覚すら持たずに、違法ラインに近づいています。
だからこそ、最も危険なのです。
価格差だけで商品を選んだ瞬間に始まるリスク
輸入ビジネス初心者に限らず、中級者でも陥りやすいのが「価格差だけで商品を選ぶ」判断です。
中国サイトで安く、日本で高く売られている商品を見つけた瞬間、人は強い確信を持ってしまいます。「これは儲かる」と。
しかし、価格差はあくまでビジネスの入口にすぎません。
本当に確認すべきなのは、その商品が日本でどのように使われ、どの法律に触れる可能性があるかです。
例えば、単なる雑貨に見える商品でも、「肌に直接触れる」「体に使用する」用途があれば薬機法の対象になる可能性があります。食品ではなくても、口に入れる可能性があれば食品衛生法が絡むこともあります。電源を使う製品であればPSEの問題も避けて通れません。
多くの人は「中国側が問題ないと言っている」「販売ページに注意書きがない」と安心します。しかし、日本で販売する以上、日本の基準がすべてです。
海外で合法であることと、日本で合法であることは全く別物です。
さらに厄介なのは、通関時点では問題が表面化しないケースが多いことです。
書類上問題がなければ、商品は普通に通ってしまいます。そのため、「通った=大丈夫」という誤解が生まれます。
しかし実際には、販売後に行政から指摘が入るケースも少なくありません。
価格差だけで商品を選んだ時点で、違法リスクを抱えた商品を手元に置いている可能性が高いのです。
「通関業者が何とかしてくれる」という誤解
輸入ビジネスにおいて、通関業者の存在は非常に重要です。しかし同時に、最も誤解されやすい存在でもあります。
多くの輸入者が、「プロが見てくれているから安心」と考えています。
確かに、通関業者は制度や手続きのプロです。しかし、彼らは商品の企画者でも販売者でもありません。
実際にどのような用途で、どのような表現で販売されるかまでは把握できません。
特に多いのが、HSコードや商品説明を丸投げするケースです。
輸入者自身が商品内容を正確に説明できていなければ、通関業者も正確な判断はできません。
万が一、後から法令違反が発覚した場合、責任を負うのは輸入者です。
「業者に任せていた」「言われた通りにした」という説明は、行政の前では通用しません。
この誤解が危険なのは、「自分は判断していない」という錯覚を生む点です。
しかし実際には、任せるという判断を下したのは輸入者自身です。
通関業者は盾ではありません。
この認識を持たない限り、違法リスクから距離を取ることはできません。
「売ってから考える」は最も危険な選択
ECの普及により、「とりあえず出品してみる」という行為は簡単になりました。
しかし輸入ビジネスにおいて、この判断は最も危険な選択肢の一つです。
販売した瞬間、商品は流通に乗ります。
流通した時点で、行政の監督対象になります。つまり、販売=チェックが入る可能性が生まれるということです。
よくあるのが、「問題があれば削除すればいい」という考えです。しかし、行政対応は削除で終わりません。
回収、報告書、改善指示、場合によっては立ち入り調査が行われることもあります。
特に厄介なのは、販売実績があるほど対応が重くなる点です。
売れた数が多いほど、影響範囲も広がります。
仕入れ前であれば止まれますが、販売後は止まれません。
「売ってから考える」という選択は、後戻りできないリスクを自ら背負う行為なのです。
なぜ人は違法に近づいてしまうのか
人が違法に近づく理由は、単なる知識不足ではありません。
そこには共通する心理的要因があります。
一つ目は成功体験の過信です。
一度問題なく回ると、「次も同じで大丈夫だろう」と考えてしまいます。
二つ目は他人基準での安心です。
「他の人も売っている」「レビューがある」という情報は、法的な保証にはなりません。
三つ目は確認作業の後回しです。
面倒な確認ほど、忙しさを理由に後回しにされます。しかし、その部分こそが最も重要です。
これらが重なることで、人は静かに、しかし確実に違法ラインに近づいていきます。
まとめ
輸入ビジネスで違法になるのは、特別な行為をしたからではありません。
多くの場合、それは判断の積み重ねです。
「まあ大丈夫だろう」と思った瞬間、リスクは現実になります。
通関を通ったかどうか、売れているかどうかではなく、自分がどんな判断をしたかを常に振り返ることが重要です。
輸入ビジネスで長く続けるために必要なのは、知識だけではありません。
立ち止まる勇気と、確認する習慣です。