貿易あるある

中国輸入で薬機法トラブルが発生したら?パルスオキシメーターの回収・返金経験から学んだ販売後のリスク

中国輸入貿易15年 内山剛

**中国輸入・中国企業取引 約15年|元フォワーダー** 国際物流会社(フォワーダー)で通関・輸送に関わる実務を経験。その後、中国からの商品仕入れやAmazon・楽天市場などでの輸入販売に携わってきました。 仕入先選び、国際輸送、通関、輸入規制、知的財産、品質トラブルなど、**「仕入れる前に確認しておきたい中国輸入のリスク」**を中心に発信しています。 中国輸入の無料相談も受付中です。

こんな方におすすめ

  • 中国から健康関連商品や電子機器を輸入している方
  • Amazonや自社ECサイトで輸入商品を販売している方
  • 薬機法の確認をどの段階で行うべきか知りたい方

 

中国輸入で商品を仕入れ、無事に日本へ届けることができた。

ECサイトに出品し、購入者から注文も入っている。

ここまで進めば、輸入ビジネスは順調だと考える方も多いと思います。

 

しかし、輸入販売で本当に怖いのは、商品を販売した後に問題が発覚することです。

私自身、過去にパルスオキシメーターを取り扱い、販売後に回収・返金対応を行った経験があります。

仕入れや通関だけでなく、販売後の対応まで視野に入れておかなければならないと考えるきっかけになった出来事です。

今回は、その経験を踏まえて、中国輸入における薬機法関連のリスクと、

問題発覚後に輸入販売事業者が考えるべき対応について解説します。

 

1. 中国で普通に販売されている商品でも日本で販売できるとは限らない

中国のECサイトでは、さまざまな健康管理用品や測定機器が販売されています。

価格も比較的安く、日本で販売すれば利益が出そうだと感じる商品も少なくありません。

しかし、中国国内で販売できることと、日本国内で適法に販売できることは別の問題です。

例えば、パルスオキシメーターは、血液中の酸素飽和度などを測定する機器です。

日本では医療機器として規制の対象になる製品であり、承認・認証などの制度が関係します。

ここで理解しておきたいのが、中国工場の説明と日本の法令との関係です。

 

中国工場に対して「この商品は日本で販売できますか?」と質問した場合、

工場側から「日本向けの輸出実績がある」「海外で多く販売している」といった回答が返ってくるかもしれません。

しかし、こうした説明だけで日本国内での適法な販売が確認できたことにはなりません。

日本向けの輸出実績があったとしても、輸出先の企業が必要な手続きを行っていた可能性があります。

また、同じような商品であっても、製造販売業者や承認・認証の内容が異なる場合もあります。

中国工場がCEマークや海外の試験報告書を提示してくることもありますが、それらが

日本の医療機器に関する承認・認証などの代わりになるわけではありません。

 

さらに、輸入者自身が日本国内で製造販売を行うのか、国内の製造販売業者が適切に流通させた製品を仕入れて販売するのかによっても、

必要な対応は変わります。

医療機器に該当する場合、製品の分類や事業形態に応じて、製造販売業の許可、製品の承認・認証等、販売業の

許可・届出などの確認が必要になります。

単純に「日本の税関を通過できたから販売しても問題ない」という考え方も危険です。

輸入時の通関手続きと、国内で継続的に商品を販売するための法令対応は、必ずしも同じものではないからです。

また、商品の広告表現にも注意が必要です。

健康関連商品では、商品名や販売ページに記載する効能・効果、測定目的などによっても法令上の問題が生じる可能性があります。

私が重要だと考えるのは、仕入価格や販売価格を計算する前に、まずその商品が日本でどのような規制を受けるのかを確認することです。

仕入先から魅力的な価格を提示されても、必要な法令対応が難しいのであれば、取引を見送るという判断も必要になります。

 

2. 販売後に問題が発覚すると何が起こるのか?

輸入した商品をすでに購入者へ販売している場合、問題は一気に複雑になります。

在庫として保管している商品であれば、出荷を止めて状況を確認できます。

しかし、すでに販売した商品は購入者の手元にあります。

何らかの問題が発覚した場合、状況に応じて販売停止、購入者への連絡、回収・返金などの対応が必要になることがあります。

私自身も、パルスオキシメーターについて回収と返金の対応を経験しました。

ここで重要なのは、商品に不具合があることと、法令上の問題があることを分けて考える必要があるという点です。

 

例えば、機器が正常に動作しない場合は、品質や安全性の問題が考えられます。

一方、商品自体が正常に動作していたとしても、必要な承認・認証や販売に関する手続きに問題があれば、

別の対応が必要になる可能性があります。

さらに、表示や広告表現に問題がある場合には、商品の性能とは別の観点から是正を求められることもあります。

つまり、購入者から苦情が出ていないからといって、必ずしも問題が存在しないとは限りません。

特に注意したいのが、販売数量と販売先の管理です。

例えば、同一商品を100個販売したとします。

その後、何らかの理由で購入者への連絡が必要になった場合、誰に何個販売したのか把握できていなければ、

対応は非常に難しくなります。

Amazonなどの販売プラットフォームを利用している場合と、自社ECサイトで直接販売している場合でも、

確認できる注文情報や購入者への連絡手段は異なります。

個人情報の取り扱いに注意しながら、必要な販売記録を適切に管理しておくことが重要です。

 

また、購入者への返金と、医薬品医療機器等法上の正式な回収手続きは区別する必要があります。

医療機器の回収では、問題の内容や事業者の立場によって、製造販売業者による回収判断や行政への

報告などが必要となる場合があります。

そのため、個人の判断で購入者に返金すれば、それだけですべての対応が完了するとは限りません。

問題が発覚した際には、販売済み数量、在庫数量、商品のロット、仕入先、販売期間などを速やかに整理し、

関係する製造販売業者や行政窓口と必要な対応を確認することが重要です。

中国輸入では、販売した商品の行方を把握できる仕組みも、リスク管理の一部だと考えています。

仕入れた商品が売れた時点で管理を終えるのではなく、販売後にも対応できる体制を整えておくことが大切です。

 

3. 回収・返金では仕入原価以外の負担も発生する

販売後のトラブルで見落とされやすいのが、回収や返金に伴う費用です。

例えば、購入者へ販売した商品代金を返金するとします。

その時点で、すでに支払った中国工場への仕入代金、国際輸送費、国内配送費などが戻ってくるとは限りません。

さらに、返品送料、回収商品の保管費、廃棄費用、購入者対応に費やす時間なども発生する可能性があります。

例えば、仮に1個2,000円で仕入れた商品を100個販売していたとしましょう。

仕入原価だけで20万円です。

しかし、実際の事業ではこれ以外にも国際輸送費、関税、輸入消費税、国内配送費、販売プラットフォームの

手数料などが発生している場合があります。

 

販売後に全商品の返金が必要となれば、購入者へ返金する資金を別途用意しなければなりません。

さらに、返品送料を事業者側が負担すれば、回収する商品の数量に応じて追加費用が発生します。

ここで忘れてはいけないのが、回収した商品をどう扱うかという問題です。

商品の状態や法令上の問題によっては、そのまま再販売できない場合があります。

適切な保管や廃棄、その他の処理が必要になれば、さらに費用と手間がかかる可能性があります。

また、購入者との連絡にも時間が必要です。

返金方法の説明、返品先の案内、問い合わせへの回答など、通常の販売業務とは異なる対応が発生します。

少人数でECサイトを運営している場合には、こうした対応が通常業務を圧迫することも考えられます。

 

そして、もう一つ問題になるのが、中国工場との費用負担の交渉です。

工場側の製造上の不具合が原因であれば、契約内容に基づいて補償を求められる可能性があります。

しかし、日本国内の法令上の問題だった場合、その責任をすべて中国工場に負担してもらえるとは限りません。

仕入契約でどのような保証がされていたのか、工場側からどのような説明を受けていたのか、輸入者が事前に何を確認していたのか。

こうした事情によって交渉内容も変わります。

また、中国工場が返金に応じる意向を示したとしても、具体的な金額や支払い方法、返品商品の取り扱いなどについて

調整が必要になる場合があります。

 

私なら、感情的に損害賠償を求めるのではなく、まず問題の原因と損害額を整理します。

そして、工場側へ確認すべき事項と、日本国内で優先して対応すべき事項を分けて考えます。

特に医療機器などでは、消費者の安全確保や法令に基づく対応を、仕入先との金銭交渉より優先する必要があります。

目先の利益を追求することと、販売後に発生する責任を負えることは、まったく別の問題です。

利益率が高く見える商品でも、トラブル発生時の負担が大きければ、事業全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

4. 私なら仕入れ前に何を確認するか?

過去の回収・返金経験を踏まえると、健康関連商品や測定機器を仕入れる際には、商品価格や販売見込みより

先に確認すべき事項があると考えています。

特に中国輸入では、仕入先から送られてくる情報をそのまま受け取るのではなく、日本国内でどのような手続きが

必要になるのかを自分自身で整理することが重要です。

 

① 商品が医療機器に該当するか

まず、その商品が日本の医薬品医療機器等法上の医療機器に該当するかを確認します。

ここで注意したいのが、中国工場の商品カテゴリーと、日本国内での法的な分類は必ずしも一致しないという点です。

例えば、中国のECサイトで健康用品や家庭用電子機器として販売されている商品でも、

日本では医療機器として取り扱われる場合があります。

商品名だけで判断せず、使用目的、機能、測定対象、表示内容などを確認する必要があります。

判断が難しい場合は、都道府県の薬務担当部門などに相談することも考えます。

 

② 日本国内で必要な手続きは何か

医療機器に該当する場合、製品の分類、承認・認証等の要否、製造販売業の許可、販売業の許可・届出などを確認します。

重要なのは、商品そのものに関する手続きと、事業者に関する手続きを混同しないことです。

例えば、中国工場が製品に関する書類を保有していても、それだけで日本国内の輸入販売事業者が

必要な許可を取得したことにはなりません。

日本国内で誰が製造販売業者になるのか、誰が販売するのか、それぞれの役割を整理する必要があります。

 

③ 中国工場は必要な資料を提供できるか

商品の仕様書、製造者情報、試験報告書、品質管理に関する資料など、必要な情報を提供できるか確認します。

ただし、資料が存在することと、実際に日本の法令上の要件を満たしていることは別の問題です。

また、海外の認証書類については、どの制度に基づくものなのか、対象製品や製造者が一致しているかなどを確認する必要があります。

仮に日本向けの販売実績があるという説明を受けても、その取引がどのような事業体制で行われていたのか分からなければ、

自社で同じ方法を採用できるとは限りません。

私は、中国工場が資料を提供できない場合や、説明内容が曖昧な場合には、慎重に判断すべきだと考えています。

 

④ 販売後に問題が発生した場合の対応を想定する

商品を販売する前に、トラブルが起きた場合の対応方法まで考えておくことも重要です。

具体的には、仕入れた商品のロット番号や数量、販売先、販売日、仕入先との連絡履歴などを必要に応じて管理します。

すでに販売した商品に問題が発覚した場合、対象となる商品と購入者を特定できるかどうかは、対応の効率に大きく影響します。

また、医療機器の場合は、関係する製造販売業者や行政機関との連絡体制も確認しておきたいところです。

回収が必要になった場合、誰が判断し、誰が報告し、どのように購入者へ連絡するのか。

こうした流れを理解していれば、問題発覚後の初動を整理しやすくなります。

さらに、仕入先との契約についても、品質保証や法令適合に関する取り決め、トラブル時の連絡方法、

損害負担などを確認しておくことが望ましいでしょう。

 

もちろん、契約書に記載したからといって、すべてのリスクを回避できるわけではありません。

それでも、トラブル発生後に初めて責任分担を話し合うより、事前に確認しておく方が適切な対応につながります。

私が過去の経験から学んだのは、利益率の高さだけで輸入する商品を決めるべきではないということです。

商品によっては、法令確認や販売後の管理に一定の時間と費用を要します。

そうした負担まで含めて事業として成立するかどうかを考える必要があります。

中国輸入で重要なのは、売れる商品を探すことだけではありません。仕入れから販売後の対応まで、

自分が責任を持って取り扱える商品を選ぶことです。

 

まとめ

中国輸入では、利益の出そうな商品を見つけることがスタート地点になります。

しかし、それだけで輸入販売を成功させられるわけではありません。

日本国内で適法に販売できること、安全性や品質を確認できること、さらに問題発覚後に適切な対応ができることも重要です。

私自身、パルスオキシメーターの回収・返金を経験したことで、販売後のリスクを強く意識するようになりました。

薬機法に限らず、PSE、食品衛生法、知的財産権など、中国輸入ではさまざまな規制や問題が関係します。

商品を仕入れる前に法令を確認し、必要な資料を集め、販売後のトラブルに備えることが大切です。

 

さらに、万一問題が発覚した場合には、購入者の安全確保と適切な法令対応を優先し、

仕入先との責任分担も冷静に整理する必要があります。

中国輸入で最も避けたいのは、売れない商品を仕入れることだけではありません。売ってはいけない商品を、

知らずに販売してしまうことです。

輸入ビジネスを長く続けるためにも、販売後の責任を見据えた商品選定を心がけましょう。

無料PDF
中国輸入を始める前に知っておきたい
15の失敗例

仕入価格、国際送料、通関、輸入規制、仕入先対応など、 中国輸入を始める前に確認しておきたいポイントをPDF全19ページにまとめています。

15の失敗例を無料で受け取る
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

中国輸入貿易15年 内山剛

**中国輸入・中国企業取引 約15年|元フォワーダー** 国際物流会社(フォワーダー)で通関・輸送に関わる実務を経験。その後、中国からの商品仕入れやAmazon・楽天市場などでの輸入販売に携わってきました。 仕入先選び、国際輸送、通関、輸入規制、知的財産、品質トラブルなど、**「仕入れる前に確認しておきたい中国輸入のリスク」**を中心に発信しています。 中国輸入の無料相談も受付中です。

-貿易あるある