こんな方におすすめ
- 中国輸入でインボイスの内容を十分に確認していない方
- 中国OEMで商品仕様や素材を変更する予定がある方
- 通関トラブルや輸入後の追加納税を避けたい方
中国から商品を仕入れるとき、インボイスに記載された商品名をどこまで確認していますか?
中国工場から送られてきた書類に「Plastic Products」「Household Goods」「Accessories」などと記載されていても、
特に疑問を持たず輸入手続きを進めてしまう方はいるかもしれません。
しかし、輸入通関では商品の名称だけでなく、材質、用途、構造、機能などが関税分類の重要な判断材料になります。
例えば、見た目がよく似た商品でも、素材や構造が異なれば、適用するHSコードが変わる可能性があります。
そして、HSコードの違いは関税率や輸入申告の内容にも影響します。
今回は、フォワーダー業務と輸入販売の経験を踏まえて、中国輸入で見落としやすい商品説明と関税分類の問題を解説します。
1. 「雑貨」という商品名だけではHSコードは決まらない
中国輸入をしていると、日用品や生活用品をまとめて「雑貨」と呼ぶことがあります。
しかし、雑貨という名称だけでは、輸入する商品の具体的な性質は分かりません。
例えば、スマートフォン用のケース一つを考えてみましょう。
プラスチック製なのか、革製なのか、繊維製なのか。単なる保護カバーなのか、それとも収納ケースとしての機能が強いのか。
こうした違いによって、関税分類の検討内容が変わる場合があります。
ここで注意したいのが、中国工場の作成するインボイスです。
中国工場によっては、商品名を非常に簡略化して記載する場合があります。例えば、複数の商品をまとめて
「Plastic Accessories」と記載するようなケースです。
輸入者自身は何を仕入れているのか理解していても、通関業者や税関がその名称だけで商品を正確に判断できるとは限りません。
また、同じ英語の商品名が使用されていても、実際には構造や用途が異なる商品も存在します。
HSコードとは、国際的な商品分類に使用される番号です。基本となる6桁は国際的に共通していますが、
その先の細分化は国によって異なります。
日本では、輸入申告の際に日本の関税率表に基づいて適切な分類を行う必要があります。
そのため、中国工場が提示するHSコードを参考にすることはできても、その番号を無条件で日本の輸入申告に使用するのは危険です。
さらに、関税分類は単純に材質だけで決まるものでもありません。商品によっては、用途や機能、関税率表の規定などを
総合的に確認する必要があります。
私なら、中国工場からの商品説明だけで判断せず、必要に応じて材質表、商品写真、仕様書、使用方法などの資料を集めます。
特に初めて輸入する商品については、インボイスの商品名と実際の商品が一致しているかを確認します。
細かな確認に思えるかもしれませんが、こうした情報が通関時の判断を左右することがあります。
中国輸入では、商品を知っていることと、その商品を通関上正しく説明できることは別の能力なのです。
2. 中国OEMで素材を変更すると関税分類も変わる?
中国OEMでは、商品開発の途中で材質や構造を変更することがあります。
例えば、金属部品をプラスチックへ変更する、布製品の繊維混用率を変更する、木製部品を樹脂製に変更するといったケースです。
工場側からすると、製造原価の削減や調達の効率化を目的とした変更かもしれません。
しかし、輸入者にとっては、品質だけでなく関税分類にも影響する可能性がある問題です。
具体的な例として、アウトドア用品を考えてみましょう。
商品に使用される主要素材や構造が変わった場合、以前と同じ関税分類でよいのか確認が必要になることがあります。
また、バッグ類や繊維製品などでは、素材の種類や構成が分類上の重要な情報になるケースもあります。
ただし、素材を変更したからといって、必ずHSコードが変わるわけではありません。あくまでも、当該商品の関税分類に
関係する変更かどうかが重要です。
問題は、工場側がこうした変更を輸入者へ報告していない場合です。
例えば、過去に問題なく輸入できた商品を追加発注したとします。
輸入者は以前と同じ仕様だと思い込み、過去のインボイスやHSコードを参考に通関手続きを進めます。
ところが、実際には工場側が一部の素材を変更していたとしたらどうでしょうか。
商品によっては、書類上の説明と現物の状態が一致しなくなる可能性があります。
こうした問題は、単純な製品検品だけでは発見できないこともあります。
外観に大きな違いがなければ、通常の目視検品では素材の変更を見逃してしまうかもしれません。
私ならOEM商品の追加発注時、価格や納期だけでなく、以前の仕様から変更された部分がないか確認します。
特に、主要素材、構造、使用目的、機能に関係する変更は、通関業者にも共有しておきたいところです。
必要に応じて、中国工場に「前回注文から材料・構造・用途に変更はないか」を書面で確認する方法も有効です。
また、製品仕様書にバージョン番号や改訂日を設け、どの仕様の商品を輸入したのか記録しておくことも考えられます。
OEMでは、工場が商品を変更したこと自体よりも、輸入者が変更を把握できていない状態の方が危険な場合があります。
品質管理と通関管理を別々に考えず、商品仕様の情報を両方に反映させることが重要です。
3. HSコードの誤りは輸入後に発覚することもある
中国輸入を始めたばかりの方の中には、税関から輸入許可が下りれば、その商品の通関手続きは完全に終了したと
考える方もいるかもしれません。
しかし、輸入許可が下りたからといって、申告内容の正確性が将来にわたって保証されるわけではありません。
輸入後に、関税分類や課税価格などの申告内容について誤りが判明することもあります。
例えば、本来より低い関税率で申告していた場合です。
後から正しい分類が判明し、納付税額に不足があることが分かれば、修正申告などの対応が必要になる可能性があります。
状況によっては、過少申告加算税や延滞税などが関係する場合もあります。
反対に、必要以上の関税を納付していたことが判明した場合には、条件に応じて更正の請求を検討できます。
ここで理解しておきたいのが、通関業者と輸入者の役割です。
通関業者は、提供された情報や関係資料を基に通関手続きを進めます。
しかし、実際の商品に使用されている素材や製造工程、商品の用途などを、通関業者が最初からすべて把握できるわけではありません。
特に、中国OEM商品では、仕入先と輸入者だけが把握している仕様情報も存在します。
そのため、通関業者に任せているから安心だという考え方は適切ではありません。
私が重要だと考えるのは、輸入者と通関業者の間で商品情報を十分に共有することです。
例えば、初回輸入時には商品写真や仕様書を提供し、通関業者から追加の質問があれば中国工場へ確認する。
継続輸入する場合も、最初に確認した商品仕様と変わっていないかをチェックする。
さらに、輸入許可書、インボイス、パッキングリスト、仕様書、仕入先との確認記録などを適切に保存しておくことも重要です。
こうした資料があれば、後から申告内容を確認する必要が生じた際にも、当時どのような情報に基づいて判断したのかを
整理しやすくなります。
また、関税分類だけでなく、原産地や関税評価が問題になるケースもあります。
例えば、取引条件によっては、商品代金以外の費用が課税価格の判断に関係することもあります。
つまり、輸入通関のリスクを減らすには、HSコードだけを暗記すればよいわけではありません。
商品の実態、取引内容、申告書類の整合性を確認できる状態にしておくことが重要なのです。
4. 輸入前に税関の「事前教示制度」を活用する
HSコードの判断に迷う場合、輸入前に確認できる制度があります。
それが税関の「事前教示制度」です。
この制度では、輸入予定の商品について、関税分類や関税率などを税関にあらかじめ照会することができます。
例えば、中国OEMで独自商品を開発したものの、どの税番に該当するのか判断が難しい場合です。
通関業者へ相談するだけでなく、税関の事前教示制度を活用することで、より明確な判断材料を得られる可能性があります。
事前教示は、原則として必要事項を記載した照会書と、商品を説明する資料などを提出する方法で行います。
資料としては、商品の写真、図面、材質、製法、使用方法など、分類に必要な情報が考えられます。
ここで注意したいのは、商品情報が不足していると、適切な判断が難しくなるという点です。
例えば、繊維製品であれば素材の構成、機械製品であれば機能や動作原理など、商品に応じて必要な資料が異なります。
単に中国工場の販売ページを印刷して提出すればよいというものではありません。
文書による事前教示の回答は、原則として発出から3年間、輸入申告の審査において尊重されます。
ただし、法令の改正や回答の前提となる商品の相違など、一定の場合にはその取り扱いが変わります。
また、口頭や通常のメールによる照会と、文書による正式な回答では、輸入申告時の取り扱いが異なる点にも注意が必要です。
さらに、事前教示を受けた商品であっても、後から材質や構造、機能などを変更した場合には、以前の回答がそのまま
適用できるとは限りません。
ここでもOEMの仕様管理が重要になります。
私なら、継続的な輸入を予定している商品や、関税分類によって原価に大きな影響が出る商品については、事前教示の利用を
積極的に検討します。
例えば、関税率が数%違うだけでも、大量に輸入する事業では年間の仕入原価に無視できない差が生じる場合があります。
輸入前の段階で関税率をある程度明確にしておけば、販売価格や利益率の計算も進めやすくなります。
また、税関のホームページでは過去の事前教示回答事例も公開されています。
類似商品の分類を調べる際には参考になりますが、見た目が似ているだけで同じ税番に該当するとは限りません。
あくまでも商品の実態や分類理由まで確認する必要があります。
最後に、もう一つ重要な点があります。
関税分類について事前教示を受けたとしても、薬機法や食品衛生法、電気用品安全法など、別の法律に関する適法性が
すべて保証されるわけではありません。
関税分類と輸入・販売に必要な法令確認は、それぞれ分けて考える必要があります。
中国輸入では、商品が日本に到着してから問題に気づくのではなく、輸入前に疑問を解消しておくことが大切です。
まとめ
中国輸入では、商品を安く仕入れることに目が向きがちです。
しかし、商品情報の確認が不十分なまま輸入を進めると、関税分類の誤りや通関書類の不備につながる可能性があります。
特にOEMの場合、商品の材質や構造が変更されることで、以前と同じ分類でよいのか再検討が必要になることもあります。
また、輸入許可が下りた後でも、申告内容に誤りがあれば修正などの対応が必要になる可能性があります。
大切なのは、中国工場の説明をそのまま信用することではなく、輸入者自身が商品の性質を理解しておくことです。
通関業者との情報共有、商品仕様の管理、必要に応じた事前教示制度の活用によって、輸入リスクを減らしていきましょう。
HSコードは、単に通関業者へ伝える番号ではありません。輸入原価と事業リスクに関わる重要な情報です。